井戸水とは？地下水との違いや種類、メリット・デメリットを紹介

井戸水とは？

井戸水とは、地下にある水源から井戸を用いて汲んだ水のことを指します。井戸は地面に穴を掘って、水を汲み上げるための設備のことです。日本においては「弘法大師」としても知られる空海が唐で学んだ技術を日本に持ち込み、そこから全国に広まっていったのが始まりとも言われています。
江戸時代には現代の井戸とは違い、水道管のような設備を埋設し、川の水を引き入れて利用する方式でした。そして江戸時代中期から明治時代にかけて、さまざまな工法が開発され、現代のような井戸の形になったとされています。
当時の井戸には手押しポンプもなかったため、滑車を利用して鶴瓶桶に水を汲んで生活用水として活用していました。さらに昭和30年頃には電動ポンプが普及し、手押しポンプもほとんどなくなりました。
現代の井戸の用途は飲用、生活用水、散水、池、ハウス栽培、工業用水など幅広い場面で利用されています。ただし井戸の種類によって水質に大きな違いがあるため、種類を把握していなければ、どのような用途で利用できるか判断できない点に注意が必要です。

井戸水と地下水の違いは？

井戸水とは井戸から汲みだされる水ですが、地下水にはもっと広い意味があります。地下水とは地下に存在する水の総称であり、井戸水や湧き水、温泉水などもすべて地下水となります。そのため、水質によって飲用には適さないもの、生活用水としても利用しにくいものなどもすべて地下水です。
簡単にいうと、井戸が設置されていれば井戸水、設置されていなければ地下水と考えればよいでしょう。加えて地下水は何層にもわたる地層を通っていく過程で、濾過されてきれいな水質に変化していることも珍しくありません。また地下水は年間を通して温度が安定していることから、夏でも冷たく、現代でも冷房として活用されることもあります。地下水を田んぼや工業用、洗浄用に利用することもあり、井戸水として使用される以外にも、地下水には多くの用途があります。
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井戸の種類

井戸には大きく分けて、地下の浅いところから水を汲み上げる「浅井戸」と、深いところから汲み上げる「深井戸」の2種類があります。それぞれの井戸の特徴・水質・用途などについて紹介します。

浅井戸

浅井戸は一般的に知られる井戸のことで、深さは10～30メートルほどあります。比較的地表に近い部分から水を汲み上げるため、周囲の環境や天候の影響を受けて水質が変化しやすいという特徴があります。そのため、生活用水や農業用といった用途に利用されることが多いです。

深井戸とは違い、地下の硬い岩盤を掘削する必要がないため工事費用が安価で、現代の一般家庭でも利用されることが多い井戸です。浅井戸で利用される地下水は「不圧地下水」と呼び、水を通しにくい岩盤の上に存在します。先ほど説明した通り、周囲で大雨が降れば不圧地下水は多くなりますが、水質は良くないことから飲用水にするのは難しいでしょう。また好天が続けば地下水が枯れてしまい、井戸水を汲み上げられなくなる場合もあります。

深井戸

深井戸は地下50メートル以上掘削を行い、水を通しにくい岩盤の下から水を汲み上げる井戸です。深井戸の地下水は「被圧地下水」と呼ばれ、長い年月をかけて岩盤に浸透し、ろ過された綺麗な水であることが多いです。そのため飲用水としても利用でき、年間を通して温度と供給量が一定に保たれています。
ただし深井戸を設置するには大規模な掘削工事が必要となるため、工事費用が高額になりやすいという点に注意しましょう。その分、飲用水や生活用水、農業用水など幅広い用途がある点も、深井戸のメリットといえるでしょう。

井戸ポンプとは？

井戸ポンプとは名前の通り、井戸水を汲み上げるポンプ式の器具のことです。井戸ポンプは紀元前のギリシャで発明されたとの説もあり、非常に歴史の古い設備とされています。日本においては江戸・明治時代頃まで鶴瓶桶で汲み上げる方式でしたが、大正時代には手動ポンプが登場し、子供でも簡単に大量の井戸水を汲み上げられるようになりました。手動ポンプは器具についたレバーを上下させることで、内部のピストンが動いて水を吸い上げるというシンプルな構造です。
さらに時代が進んで昭和に入ってからは電動ポンプが発明され、現代では多くの井戸が電動ポンプを利用しています。電動ポンプは電動モーターが水を地下から吸い上げ、蛇口を通して水が出るようになっています。水道設備の発達した現代では電動ポンプと水道をつなぎ、蛇口をひねるだけで井戸水が出る仕組みにしている家庭が一般的です。一方で、災害時でも利用可能な手動ポンプ式の井戸も、地域によっては残されている場合があります。

井戸ポンプの種類

井戸ポンプの種類には、手動ポンプと電動ポンプがあります。それぞれどのような違い、メリット・デメリットがあるのかを紹介します。

手動ポンプ

手動ポンプは機械のハンドルを上下させ、内部のピストンを上下させることで地下水を汲み上げる仕組みです。人力で行うことから多少の力は必要ですが、電力を消費せず、災害時でも使用できることがメリットです。地域の集会所や避難所の近くに設置されていると、災害の避難時にも綺麗な水を使用できます。デメリットは、水道とはつながっていないため、水をバケツなどに入れて運ぶ必要があることです。多少の不便さはあるものの、緊急時に1台あると非常に便利です。

電動ポンプ

電動ポンプは電動モーターを動かし、地下水を汲み上げる仕組みです。日本では上下水道設備が発達したことから、電動モーターで井戸水を汲み上げ、水道から出せるようにしている家庭も珍しくありません。電動ポンプは蛇口をひねるだけで水が出るため、誰でも井戸水を利用できるのがメリットです。ただしわずかとはいえ電力を消費することと、停電時には利用できなくなるのがデメリットといえるでしょう。

井戸水を使うメリット・デメリット

水道設備の発展した現代でも、井戸水は一般家庭で使用されることがあります。井戸水を使用することでどんなメリット・デメリットがあるのか、それぞれ解説します。

メリット

井戸水を使用するメリットは次の通りです。

・年間を通して一定の温度の水が利用できる。
・水道代がかからない。
・カルキ臭が苦手な人でも使いやすい。
・災害や断水でも水が使える。

井戸水は地下深くに溜まった水であることから地上の気候に影響されず、夏は冷たく、冬はちょうど飲みやすい温度の水が使用できます。地下水であることから水道代もかからず、塩素による消毒もしないことからカルキ臭もありません。何より災害や断水、寒冷地での凍結による水道管の破裂時にも水を使えるのは大きなメリットです。

デメリット

井戸水を使用するデメリットは次の通りです。

・設置に工事費用が発生する。
・地震や大規模な洪水などが起きると水質が悪化する可能性がある。
・生活用水に使用すると衣類や家具等の痛みにつながる場合がある。
・細菌が含まれる可能性があるため、定期検査が必要になる。

井戸を設置するには掘削工事、ポンプ設置などの初期費用が必要です。その際、地下水が汚染されていないか検査を行うとともに、井戸設置後も定期的な検査を行って水質が安全かどうかを確認する必要があります。
また地下水は水道水と比べて水質や成分に違いがあるため、生活用水として使用すると衣類や家具に思わぬ影響を与えることもあります。

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まとめ

水道の普及とともに減少していった井戸ですが、現代の環境保護や費用節約といった観点から再度注目されつつあります。年間を通して安定した水資源を確保でき、災害時にも綺麗な水が利用できることが大きな理由です。初期費用や定期的な水質検査などは必須ですが、ろ過すれば水道水以上に不純物や有害物質が少なく、飲用としても生活用水としても利用できます。井戸水の利用に関心のある方は、三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社で水資源の有効活用について相談しましょう。