PFAS(有機フッ素化合物)とは、水や油をはじく特性を持つ人工化学物質の総称で、1万種以上が存在します。その中でも特にPFOS やPFOAは、環境中で分解されにくく体内に蓄積しやすいため、日本や海外で健康影響が懸念されています。
日本の水道水は水質基準が管理されており、PFASの濃度も監視されています。通常の生活で飲用しても健康への影響はほとんどないとされていますが、地域によっては基準値を超える濃度も検出されているため注意が必要です。特に懸念されるのはPFOSやPFOAであり、国内でも一部地域で検出例が報告されています。
水道水のPFOS及びPFOAの検出に関して、2020年度に暫定目標値である1ℓあたり50ナノグラムを超えた地域は次の通りです。
東京・神奈川・愛知などの都市部、その他にも全国各地でPFOS やPFOAが検出されました。しかし、2024年9月末までの時点で検査実施1745箇所で暫定目標値を超えた場所はありません。
https://www.env.go.jp/content/900517679.pdf
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241201/k10014653471000.html
日本水道局の水道統計と自治体へのNHKの聞き取り調査により、PFOS+PFOAが検出された地域について、令和3年度時点での地域ごとの検出状況を一覧にしました。
|
地域 |
都道府県 |
検出箇所数 |
|---|---|---|
|
北海道 |
北海道 |
0 |
|
東北 |
福島県 |
1 |
|
関東甲信越 |
茨城 |
15 |
|
栃木 |
9 |
|
|
埼玉 |
15 |
|
|
千葉 |
25 |
|
|
東京 |
6 |
|
|
神奈川 |
3 |
|
|
新潟 |
4 |
|
|
長野 |
3 |
|
|
中部 |
福井 |
10 |
|
静岡 |
17 |
|
|
愛知 |
4 |
|
|
三重 |
4 |
|
|
近畿 |
滋賀 |
6 |
|
京都 |
13 |
|
|
大阪 |
23 |
|
|
兵庫 |
24 |
|
|
和歌山 |
4 |
|
|
中国 |
鳥取 |
1 |
|
岡山 |
13 |
|
|
広島 |
1 |
|
|
山口 |
3 |
|
|
四国 |
愛媛 |
8 |
|
高知 |
1 |
|
|
九州・沖縄 |
福岡 |
1 |
|
佐賀 |
2 |
|
|
長崎 |
8 |
|
|
熊本 |
9 |
|
|
沖縄 |
7 |
出典:https://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic094.html
家庭でできる水道水のPFOSやPFOAの対策として、具体的には次のような方法があります。
PFOSやPFOAは日常生活のさまざまな場所に含まれている可能性があるため、まずはどのようなものに使用されているかを知り、少しずつ減らす工夫をすることが大切です。なお、一般的なフッ素樹脂加工(PTFE)フライパンはPFOSやPFOAとは異なるため、直ちに規制や使用制限の対象とはなっていません。過剰に不安になる必要はありませんが、製品の安全性表示や環境への影響に配慮して選ぶと安心です。
PFAS対策として浄水器は一定の効果がありますが、すべての製品が有効とは限りません。特に有効とされるのは「活性炭フィルター」や「逆浸透膜(RO)」を搭載したタイプです。活性炭は一部のPFASを吸着し、ROはより高精度に除去可能です。ただし性能は製品ごとに異なり、すべてのPFASに対応できるとは限りません。
そのため選び方のポイントとして、まず「PFOSやPFOAなど主要なPFASの除去性能を明記しているか」を確認しましょう。第三者機関(NSF、JISなど)の認証がある製品は信頼性が高いため、PFAS除去を意識するなら優先的におすすめできます。またフィルターの交換頻度やコスト、設置の手軽さも重要です。カートリッジ交換を怠ると除去性能が低下するため、定期的なメンテナンスが前提となります。さらに、蛇口直結型やポット型では除去能力が限定的なことが多く、高性能を求めるなら据え置き型やROシステムがおすすめです。
日常生活でPFOSやPFOAの摂取を減らすには、食品や日用品の選び方を工夫することが有効です。たとえば電子レンジ対応の耐油紙や一部の使い捨て食品容器にはPFOSやPFOAが使用されている場合があるため、使用を控えるか「不使用」と表示された製品を選ぶと安心です。
また、防水・防汚加工された衣類やソファ、カーペットなどにもPFOSやPFOAが含まれている可能性があるため、購入時には成分表示や製品情報を確認し、環境に配慮した製品を選ぶことが望まれます。
一方で、一般的なフッ素樹脂加工(PTFE)のフライパンや鍋は、PFOSやPFOAとは異なる素材であり、直ちに規制対象となっているわけではありません。過剰に不安になる必要はありませんが、製品の安全性表示を確認した上で、長く安心して使える調理器具を選ぶとよいでしょう。
さらに、室内のホコリに微量のPFOSやPFOAが含まれることもあるため、こまめな掃除機がけや水拭きを心がけることで、曝露を減らすことが可能です。このように身の回りの製品や生活習慣を少しずつ見直すことで、PFOSやPFOAへの接触を抑えることができます。
国内では一時期、河川や地下水、水道水などでPFASが検出された報道が騒がれ、近隣の水を使用する住民に大きな不安と混乱をもたらしました。特にPFOSやPFOAによる具体的な健康被害は現時点で明確には出ていませんが、長期的な健康影響への懸念は払しょくできていません。そのため家庭で使用する水道水や地下水も、PFAS除去機能のある浄水器を使用することで安心して飲用できます。健康や環境への悪影響を避けるためにも、家庭・事業用の高性能な浄水器の使用がおすすめです。